富山県立中央病院 先端医療棟増築・既存棟改修
㈱奥田計画事務所・㈱ピーエーシー環境モード+㈱内藤建築事務所
1.先端医療棟増築の経緯
病院機能の拡充についてはここ数年各部門から要望があった。それらをまとめ2010年頃から具体的な検討に入っていた。以下が今回求められた機能拡充の主な内容である。
- いわゆるロボット手術やハイブリット手術など手術室の更新、室面積の拡大、手術部門全体面積の拡大。
- ICUの拡充、スーパーICUの新設
- 災害時対応病室の確保。メディカルシュミレーションの確保
- 狭隘である内視鏡部門の拡充。
- 分散している超音波診断部門の集中化。
- 一部外来部門の拡大。(生活習慣病外来)
- MRI、CTなど画像診断部門の強化、機器の更新。
- 総合的な相談機能の強化。(入退院センター)
- 中央採血・採尿の拡充。待合の確保。
- 通院治療の拡充。22床を40床に。
2.先端医療棟・既存棟改修の概要
これらの要望をまとめ先端医療棟(増築部)と既存部の改修を計画した。増築は既存中央診療棟北側とした。
- 4階:手術部門を水平方向にのばしa)を実現した。既存は順次改修を行った。またICUの整備に伴い既存中央病棟4階(HCU・ECU)を整備しHCU・リカバリーおよびME部門に改修した。
- 3階:b)c)を増築部に配置した。
- 2階:d)e)を増築部に、f)を既存部に設けた。
- 1階:増築部ではf)の他、一般撮影部門を移設した。既存部はh)i)j)を実現した。このことで既存部1階を入退院センターにし新たな病院の顔とすることを目指した。
断面構成の変化イメージは図1の通りである。
図1.断面構成の変化
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3.今回工事手順・工事上の留意事項
- 2015.2~7:旧霊安解剖棟の新設および既存解体
- 2015.7~2016.8:先端医療棟増築
- 2016.9~2017.3:既存改修
- 4階手術部門は順次改修を行い2017.3完成した。
- 1階は2017.1完成、その後2・3階の改修を行った。
既存施設を使いながらの増築・改修であり環境汚染管理、特にアスペルギルス症対応には留意した。院内感染管理委員会とは工事方法について協議を重ね進めた。
4.これまで約22年の主な工事履歴
当院は1995年既存棟の全体完成を終えている。同一敷地内のほぼ全面建替えであった。それ以降の施設上の変更は主に表1の通りである。
- 全体完成の約16年後、2011年に老朽化した旧東病棟(精神科)の建替えを行った。引き続き総合周産期センターおよび救命救急部門の整備・拡大に伴う改修も同時に行った。(中央病棟1~2階)ただし解体を伴うので面積増はあまりない。純粋な増築は今回が初といってよい。
- 1床当り延べ床面積は1997年全体完成時70.5㎡/床から89.3㎡/床にまで拡大した。これには病床数が800床から733床にまでダウンサイジングしたことも大きくかかわっている。
表1:これまで約22年の主な工事履歴
5.施設配置の変化
主要年の配置図を示した。
- 2032年、2042年は将来計画である。
- 全体完成以前の1989年の状況も挙げた。旧東病棟・厚生棟・交流棟他は当時も存在する。
- 2011年東病棟建替に伴い今回先端医療棟のスペースを確保した。
6.施設計画の基本方針
- 医療ニーズの変化に迅速に対応できる施設であること。
- 施設に投資する費用を最低限にすること。
この2点を施設計画の基本方針にしている。そのためにコスト意識を持ちながら継続的に医療ニーズを取り込んだ施設計画を行っていること、また明確なマスタープランを立てていることが重要であると考えている。